相談室からの風景      ~MSWコラム~

ソーシャルワーカーという職業をご存知の方も増えつつあるとは思いますが、実際関わってみないと、何をする人かピンとこない、というのはまだまだあるかもしれません。 特に病院のソーシャルワーカー(MSW)と接する場面というのは、 […]

ソーシャルワーカーという職業をご存知の方も増えつつあるとは思いますが、実際関わってみないと、何をする人かピンとこない、というのはまだまだあるかもしれません。

特に病院のソーシャルワーカー(MSW)と接する場面というのは、ご自身が病気やケガに見舞われたり、ご家族、友人などが困った状況になったりと、何かしらのアクシデントの時が多いので、その時点から関わらせていただき、その関係が終わる時(要するに、状況が変化して病院を退院したり治療が終了する時)には「またお会いしましょうね」とか「また来てくださいね!」とはあまり言わないようにしています。なぜなら、再度、アクシデントで困ってお会いすることが無いことを願っているからです。

とはいえ、一度できたご縁ですし、ソーシャルワーカーのお仕事を知っていただいたせっかくの機会を大切にしたいので「困った時はいつでも相談くださいね」という声掛けはするように心がけています。身体の調子が悪いとか、生活の心配事や不安など、どうしようかなと思ったときに、そういえばあそこにソーシャルワーカーのあの人がいた!と、思いついてもらえれば幸いです。病院とはあまり縁深くないことが望ましいですが、病院・病気ケガとは縁が切れたとしても、病院の相談室はわりと身近で気軽な場所だと思ってください。

さて、そんな相談室に長年勤務していると、様々な患者さんやご家族、地域の皆様と数多く関わらせていただきます。無事に退院された患者さんが外来通院に来られて、すれ違いざまにお顔を拝見しては、ソーシャルワーカーが関わる必要無く生活されていることに安堵することもたびたびあれば、最近歩き方がおぼつかなくなってきたのでは?お耳が遠くなったかな?と、遠くからお姿を拝見しては、少々心配させられる患者さんも時にはありますが、要請がなければしゃしゃり出ず、でも困っているようであればいつでも対応できるよう院内を静かにパトロールしています。

先日、20年ぶりに関わらせていただくことになった患者さんがいました。その患者さんというのは、私が新人の頃、関わらせていただいたケースで、同居するお姑さんの介護を担っていたお嫁さんでした。当時、介護保険制度は始まったばかりで、サービス事業所も今よりずっと少なく、都市部でありながらもまだ、自宅で「お嫁さん」を主体とした在宅介護というのはよく見られた光景です。

若い新人ソーシャルワーカー(私です)が担当することになって、今思えば、患者さんやご家族には不安な思いをたくさんさせたかとは思いますが、見たこともない多くの工夫を凝らし、懸命に、そして愛を持って明るくおおらかに、お姑さんを介護する生活の一部をお手伝いをさせてもらえたことは、当時の私にたくさんのことを教えてくれましたし、今の業務の礎の一つになりました。

時が巡り巡って、今回は、そのお嫁さん自身の生活のサポートを考えてほしいと、外来の医師からたまたま私に要請がありました。面談室で20年振りにご挨拶をさせていただくと、もちろん私のことは覚えておられません(それでいいんです)。表情は硬く、どうしてこうやって面と向かってあなたと話をしなきゃなんないのかと戸惑っておられます。あれから時が過ぎ、お嫁さんもお年を召され日常生活で心配なことが増えるようになり、それを支える傍らのご家族も不安げで、大変お疲れのご様子でした。

ご本人の気持ちも汲み、ご家族の負担も考えて、ケアマネジャーとも相談、まずは最低限のサポート体制を組んでみることになりました。打ち合わせの際、「20年前、〇〇さん(お姑さん)を一生懸命お世話されていましたよね、当時、私もたくさん勉強させてもらったんですよ」とお姑さんのお名前をお出しして感謝をお伝えしたところ、表情が一変、パア~っと笑顔になりました。「私はあんたのこと覚えとらんけど、私のことを覚えててくれてる人がココにおるとはねぇ~」と。初心者マークの私に在宅介護はなんたるかを教えてくれたあの時のお嫁さんの朗らかな笑顔をまた見ることができました。

最近、サステナブル(持続可能な開発目標)という言葉をよく聞きますが、病院やソーシャルワーカーの関わりもある意味サステナブルと言えるかもしれません。世の中も人間も循環し、生き方、死に方、暮らし方、支援の方法や考え方、病院の在り方なども変容しながらも、時代や世代を超えて、持続的に地域の皆様のお役に立てるよう、本日もいつも通り相談室のドアを開けていますので、お気軽にお立ち寄りください😊