もしもの時の心づもり

         

 編集部  

コロナウイルス感染症に翻弄されること1年を超え、多くの皆さんにとって、暮らし方や考え方など大きく変化したことと思います。当院もこの1年間で、今までにない局面をいくつか目の当たりにしています。患者さん、利用者さんにご理解ご協力をいただき、診療や医療介護サービスを続けております。

また、今年は東日本大震災から10年。感染症や震災のみならず、病気やケガなど、いつ、どこでだれがどのような当事者になるかはわかりません。認知症や介護問題も然りです。今回は、そんな「もしもの時」を考えることについて情報提供させていただきます。こんな時代だからこそ、そして、これからを生きていくために、お読みいただければ幸いです。

こんにちは。かわな病院 患者サポート相談室のソーシャルワーカー 吉田です。

かわな病院では、2018年より、「入院のご案内」の中に「もしもの時のための私(家族)の心づもり」という書類を入れています。

これは、「もしもの時」に備え、「今」ご本人が大切にしていることや、「今後」どのような医療やケアを受けたいか(受けたくないか)などについて、お伺いするものです。入院時だけではなく、訪問診療開始時や外来でお渡しすることもあります。

具体的には、「あなたが大切にしたいことはなんですか」や、「将来、病状が悪化したり、もしもの時が近くなった時には、どこで療養したいとお考えですか」など、11の質問について選択肢の中から選んで回答する項目と、あなたの思いについて自由に記入する自由記載欄があります(※ご興味のある方は、本コラム一番下の画像をご覧ください)。

皆さんの中には、「もしもの時の話だなんて、縁起でもない」と、避けたいと思われる方もいるかもしれません。

しかし、「もしもの時」は、思いがけず、突然起きるものです。

また、昨今のような新型コロナウイルス感染症拡大下で入院した場合、殆どの医療機関では感染予防対策で面会制限をしているため、直接顔を見ながらゆっくり話し合うことが難しくなります。

そんな時、普段からご家族や大切な人たちと話し合いをしておけば、自分自身で判断できなくなったり、自分の気持ちを話せなくなったとしても、その人たちが、あなたの代わりに希望を伝えたり、医療やケアについて考えてくれるでしょう。

それは、あなたのためだけでなく、あなたに代わって色々な選択をすることになった人にとっても、迷いや後悔、心の負担を減らす、助けになるはずです。

お話し合いの場に、医療・介護スタッフが参加させていただくことも可能です。

ご本人が、これまでどのようなことを大切にして人生を送り、医療やケアに対し、どのような希望を持っているかなどを知ることができれば、よりご本人の思い・希望に添った支援を行うことができます。

ご希望の方は、スタッフまでお知らせください。

ただ、当院では、この書類を「必ず提出してください」とはお願いしていません。

なぜなら、その時のご状態や状況によっては、そのようなことを考えたり話したりすることが大きな心の負担になってしまうことがあるからです。「考えたくない」という気持ちにも十分な配慮が必要です。

それぞれが、それぞれの良いタイミング、例えば、関連したテーマのテレビドラマやニュースを見た時、ご家族が集まるお盆やお正月などの際、“少し考えてみようかな”と思った時に、この「もしもの時の心づもり」のことを思い出し、参考にして頂けたら幸いです。

一度決めたことでも、時間や健康状態の変化などによって、思いや希望は変わっていくものです。「もしもの時の心づもり」は、いつでも見直し、書き直しても構いません。むしろ、繰り返し考え、確認し、話し合うことをお勧めしています。

私たちは皆、いつ、どこで、どのような最期を迎えるのか分かりません。しかし、すべての人に等しく必ず「もしもの時」は訪れます。

「もしもの時」のためだけでなく、「今」を自分らしく生きるため、もしもの時の心づもりをしてみてはいかがでしょうか。