あなたの「好き」を見つけよう、ワインをもっと楽しもう!

大竹酒店  店主 大竹謙一郎さん

川名駅からほど近い、 川原通7交差点の東から北東に延びる通りにある山花町(やまはなちょう)商店街は人気のスーパーや各種飲食店(以前ご紹介した比呂野もこの通り)などが立ち並ぶ、地域住民の生活に欠かせない場所です。
そこには「満寿泉」ののれんとシルバーのフィルムに覆われたガラス面が印象的な「大竹酒店」があります。今回は大竹酒店の店主、大竹謙一郎さんにお話を伺いました。

  

お店の歴史

私の父が大学を卒業後酒屋さんで修行した後、母と二人で始めたのが大竹酒店です。当初は隣にあった山花市場(現在の八百鮮の場所)内で味噌や醤油など調味料を販売していたようですが、その後に酒類小売免許を取得し、現在の場所で本格的に酒屋を始めたそうです。私は高校を卒業後、公務員として10年間働いた後の1991年、結婚を機に二代目として大竹酒店に入りました。

結婚当時、まだアルコール類は酒屋でしか買うことができなかったため、それなりに忙しく働けてはいましたが、行く行くは規制が緩和され、自店を含め、ビール屋の配達を主としている町の多くの酒屋は遠からず淘汰されていくであろうと容易に予測ができました。

御用聞きなどを積極的に行って外販を強化するか、コンビニエンスストアに変えるか、選択肢は幾つかありましたが、漠然とではあるものの選んだのが専門店化でした。

最初は、それまで好んで飲んでいたカクテルに関連する蒸留酒やリキュール類を中心とした店にしたいと思っていたのですが、商売として難しいことは駆け出しの自分にもよく分かっていたので、暫くは悶々と日々を過ごしていました。そんな折、縁あって先達のワインショップや地酒の蔵元と知り合う機会に恵まれ、以後少しずつですが自信を持って売れるワインや地酒を販売できるようになりました。それまで通りビールを中心に販売しながらも、専門店としての第一歩を踏み出すことができたのです。

ただ、それまでの大竹酒店は本格的なワインや地酒を全くといっていいほど扱ったことがなかったため、当初なかなか両親の理解が得られず、毎日が戦いでした。そのため、両親が寝静まった深夜に一人、勝手に陳列レイアウトを変更したり、売り場やバックヤードの棚を移動したりしてほぼ毎朝、両親を驚かせていました。特に父は、怒り心頭に発していたと思いますが、最後は根負けして何も言わなくなりました。

 

  

品質管理

ワインや地酒は品質管理がとても重要です。バックヤードを含む店内は常に低温に保つ必要があります。温度も出来るだけ一定に保ちたかったので、採光を防ぎ、換気用の窓を断熱材で塞ぎ、エアコンを増設して24時間、365日稼働させるようにしました。それらに加えて、紫外線も酒質に悪影響を及ぼすので、店内全ての蛍光灯を博物館用(現在はLED)に付け換え、冷蔵庫の蛍光灯も全て外し、出入り口を含む全てのガラスに遮光遮熱フィルムを貼りました。強力なフィルムだと外から店内が見えなくなりお客様が入り難くなってしまうので、幾らか妥協して外からの見やすさもあるフィルムにしました。

しかしながらフィルムを妥協したことがずっと気になっていました。後年、エアコンをより高性能なものに取り換えた際、併せて一番強力なフィルムに貼り換えました。このフィルムのおかげで外気温が40度前後まで上がっても、店内は20度を超えることはありません。年間の店内温度はあまり変わらないのですが、夏は寒く、冬は逆に暖かく感じます。いずれにせよ長居はできませんが(笑)

 

  

ワインの取り扱いが多い理由

日本酒に比べ圧倒的に種類が多いという単純な理由からなのですが、ワインは原料品種の特徴や収穫年の出来/不出来、産地の気候や土壌、醸造方法などなど、それらによる香りや味の個性も日本酒に比べると大きな差があります。本当に価値があるといえる良いものだけを厳選したとしても、品揃えが減ることはなく、今後も増えていくだろうと思います。

私が追い求めるワイン(実は日本酒も)は、少々矛盾するのですが、「アルコール度数が低く、それでいて飲み応えがあるもの」です。

2、30年くらい前までは今のようにアルコール度数の高いワインはそれほど多くはありませんでした。特定の産地か余程の優良年(葡萄の糖度が高い)でもない限り、赤ワインであっても14%を超えるようなものは珍しかったはずです。現在は、1,000円未満のお手頃価格であっても、赤ワインならば14%を超えるものもそれほど珍しくはありません。

アルコール度数の高いワインは、安価であっても余韻は長く感じられ、それ故フルボディな味わいと重宝がられますが、私の考えるフルボディは違っています。最初にお話ししたように、アルコール度数がそれほど高くないにもかかわらず、長い余韻が楽しめるものです。

例えば、長期熟成ワインの代表格であるボルドー・グランヴァン、特にシャトー・ラトゥールやシャトー・ペトリュスなどの超一級品の、優に50年以上(中には100年以上)は熟成するであろうといわれるような超優良年のものでさえアルコールは13%台が普通で、決して高くはありません。ただ、それらの余韻は非常に長く、不思議なことに良い熟成をしたものにいたっては、味わいがやさしくなっています。にも拘わらず、若い頃よりも更に余韻が長く感じられたりします。その理由として、やはりフルボディの重要な要素である「酸」が強く影響していると思っていて、例えば、最も冷涼な産地として有名なドイツの甘口白ワインは、アルコールが10%未満ですが余韻はとても長く(優良ワインに限られますが)非常に長い熟成にも耐えられます。少々大袈裟に思われるでしょうが、私は、ワインにとって「酸こそ命」と強く思っているくらいです(笑)

店頭に並んでいるワインのほとんどは試飲をした上で仕入れています。同じワインでも年によって香りや味の差が大きかったり、世間で人気のワインであっても納得できなかったりすることは多々ありますからね。いくら安価であっても、有名であっても「買って損した」とだけは思われたくないのでそこは譲れません。ですから、輸入元の説明を鵜呑みにすることなく、評論家や世間の評価にも極力左右されず、自分で確かめ納得した上で仕入れるよう心がけています。そうでなければ自信を持って薦めることはできません。なので、店頭に並んでいるワインについては価格を含め、品質的にも自信があるものばかりです。

 

 

ワイン初心者へのお薦めの仕方

まずご希望の金額を伺い、その金額よりも更にお値打ちなものを基本的にお薦めしています。予定していた金額よりも安くて美味しかったら「お買い得感」がありますからね。

あとは、ワインを含め、普段よくお飲みになるアルコール類があれば、その好みや感想などもお聞きした上で、その方に合いそうなものを選ぶようにしています。

このワインなども今のお薦めです! 2020年の南アフリカの白ワインです。このワインは今まで何度か試飲した後に扱ったことはあるのですが、たまたま試飲する機会が多くはなかったために定番にはなっていませんでした。今回、久しぶりにこのシャルドネ(白)を試してみて、これはまず定番になるだろうと思えました。瑞々しい柑橘系果実の香りがしっかりと感じられ、この価格帯でも結構複雑性を感じます。あとこちらもお薦めです! 同じ生産者の品種違いで、ソーヴィニョン・ブラン種の個性であるハーブや青草のような香りが心地よく感じられ、同じく個性である酸も十分ながら強すぎず、素晴らしい出来です。

実はこの2つのワイン、皆さんよくご存じの「ボジョレ・ヌーヴォー」よりずっと早くから今年の出来を確認できるんですよ。南半球産のお手頃価格の白ワインだからあり得る、意外と知られていない楽しみ方かもしれません。

南アフリカ スピアー シャルドネ(左)、ソーヴィニヨンブラン(右)

  

  

季節の料理に合わせたワイン

味付けや好みは人それぞれなので、ワインも好みや飲んでみたいと思うものがあればそれを優先されれば良いと思っています。その上で、これならばまず外さないであろうと思うものを一応、お薦めしています。ワインが美味しければ酒屋としては及第点ではないでしょうか。

和食

最近輸入されるようになったこのポルトガルの白ワインはかなりお薦めです。アルコールがやや低めで、レモンサワーなどがお好きな方にも好まれるのではないでしょうか。僅かに炭酸ガスを含み、さわやかな酸と果実味を楽しめます。ポルトガル北部や隣接するスペインのガリシア地方で栽培されているアルバリニヨという葡萄が使われていて、この品種を使ったワインとしては大変お値打ちです。すっきりと綺麗な味わいは和食全般に合わせやすいでしょう。

ポルトガル エンコスタス・デ・カイズ(アルバリニヨ種)1,315円

  

〇寄せ鍋

日本での人気は今一つですが、ロゼワインも良いと思います。当店の定番品からだと、イタリアはシチーリア島のこの辛口白ワインもお薦めです。特に2018年は素晴らしい出来で、何よりこの価格でこの品質はとても魅力的です。

イタリア  ロチェーノ・グリッロ(グリッロ種)712円

  

〇ビーフシチュー

カベルネ・ソーヴィニョン種やメルロー種を使用した、しっかりとした赤ワインが無難だと思います。産地的にはフランスのボルドーとかが基本としていますが、今の状態がとても良いので、この2011年のスペインのカベルネ・ソーヴィニョンも面白いと思います。

約10年の熟成を経てまろやかな味わいですし、タンニンは豊かでバランスの良いワインです。樽の香りもボルドーワイン的な高級感を感じます。牛肉料理全般に合うでしょう。

スペイン カンポ・マリン(カベルネ・ソーヴィニョン種)1,385円

  

川名とかわな病院との関わり

実は刑部病院(後に「かわな病院」に名称変更)の頃から関わりがあって、以前は調味料などを納品していましたし、(生寿会の)新栄クリニックにも調味料を納品していたんですよ。

川名という地域は、時代と共にずいぶんと変わってはいるものの、旧来からの住宅街のため閑静で、市内有数の文教地区であり、地下鉄も利用しやすい環境なのでとても魅力的だと思います。

そのせいか最近は、地下鉄川名駅周辺の人気はとても高いらしいですね。過不足なく揃っていますし、十分頷けます。


初めて大竹酒店を訪れる方は、店内に入った瞬間ワインの種類の多さにきっと驚くと思います。大竹さんに相談すればきっとあなたの好みのワインが見つかるはず。しかも置いてあるワインは毎日飲める嬉しい価格帯のものが多く、ファンが多いのも頷けます!
ワイン好きはもちろん、これからワインを覚えたい方にもぴったりのお店です。
あなた好みのとっておきの1本が見つかりますように。

  

大竹酒店
愛知県名古屋市昭和区山花町35−1
052-751-2967

  

★おまけ★

(左) シャトー・グリュオ・ラローズ 1920年
(右)シャトー・マルゴー 1945年  
金額は大竹さんまで^^