「ここで暮らしたい」を創り続ける、地域に寄り添うホームドクター

坂井歯科医院 院長/いりなか商店街発展会 会長 坂井謙介さん

当院併設のサービス付き高齢者向け住宅アンジュかわなもお世話になっているお口のケアのスペシャリスト 坂井歯科医院の坂井院長は、株式会社リクルート住まいカンパニーが実施するWEBアンケート「住民に愛されている街(駅)ランキング2020」で1位になったいりなか駅のいりなか商店街発展会 会長としてもご活躍されています。

今回は坂井歯科医院 院長兼いりなか商店街発展会 会長の坂井謙介さんにお話を伺いました。

  

先進的な祖父や父の姿を見て

祖父、父ともに歯科医師だったので、私もその姿を見て歯科医師になりました。

その祖父は一宮市で開業し、愛知県で早期にレントゲン撮影装置を導入した先駆的な歯科医師だったと聞いています。その後父も歯科医師となり、昭和46年2月6日にいりなかで現在の基となる坂井歯科医院を開業しました。

父は日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という8020運動を立ち上げた一人です。

愛知県歯科医師会の専務時代の、平成元年2月3日より8020運動を全国展開しました。

公衆衛生を得意とした父は啓発活動を推進すべく財団設立などに力を注いでいました。また、これからの時代は摂食嚥下障害(※)に歯科医師が入っていくべきだ、と20年以上前から提唱していました。

そんな姿を見て私も歯科医師に。長崎大学歯学部卒業後、名古屋大学医学部口腔外科医局に入りました。当時は歯科医師よりも研究者になりたいという思いが強かった時期でした。

※摂食嚥下障害…食べ物や飲み物を口の中に入れ、胃まで送り込む働きのことを“摂食嚥下”と言います。 この一連の動作がうまく機能しない状態のこと。 食べ物をうまく飲み込めなくなったり、食べた物が誤って気管へ入る(=誤嚥する)ことで、窒息や肺炎などを引き起こすことがあります。

 

強みを活かし、坂井歯科医院を引き継ぐ

愛知県がんセンターに10年間非常勤医師としてがん患者さんのお口のケアに関わっていました。白血病患者さんは抗がん剤を使用すると口内がすごく荒れるんです。あの当時は歯磨きをすることで口内が傷つき、そこから感染症になりやすくなると言われていたので、歯磨きは推奨されていなかったんです。でも実は逆で、歯磨きをしない方が歯周病菌に感染していくリスクが高いことがわかり、現在では歯磨きが推奨されています。

がん患者さんの口腔ケアが取り残されていたのを現場で目の当たりにし、どうにかしなきゃと思いました。そこで静岡県がんセンターの故・大田先生とともに、がん患者さんの口腔ケアの啓発活動に取り組みました。

その後名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院にて、脳出血や脳梗塞の患者さんの口腔ケアや、飲み込みの上手く出来ない半身まひの患者さん、認知機能が低下している患者さんなど、様々な方のケアに携わりました。

そんな折父が倒れ、私は父の後を継いで2008年に院長に就任しました。

父は8020運動などの公衆衛生啓発活動で本当に忙しく働いていたので、医院経営まで手が回らなかったのを院長に就任してから知りました。経営状態をみてびっくり(笑)。

それまではどこか心の片隅で、医療留学や研究者としての道に進みたいという気持ちがありましたが、坂井歯科医院を本格的に引き継ごうと決めた瞬間でした。

院長に就任してからは少しずつですが診療台を増やしていき、これまでの経験を活かしてがん患者さんなどのお口のケアのため、ご自宅に伺う訪問診療も始めました。かわな病院さんとも嚥下障害などのケアで医療連携を行い、地域医療の大切さを改めて感じました。

  

   

地域のオピニオンリーダー、いりなか商店街発展会の会長として

2011年の東日本大震災の経験を経て、地域の力・地域コミュニティの力が災害時いかに大切かということがわかりました。そして一歯科医師として何か活動できないかと模索していた時、いりなか商店街発展会の会長のお話をいただいたんです。

医療関係者が会長になるのは初めてだと聞き、歯科医師という職種でこの役職がこなせるのかプレッシャーでした。でもこの街が好きで、この街で暮らす・ここで営む人たちが大好きな気持ちは誰にも負けないと思います。

ここに住む人たちも、これからを担う子供たちにも、もっともっとこの土地を好きになってもらえるよう、私は人と人を「つなぐ」役割になりたいなという思いから会長に就任しました。

会長になってからは、いりなかで活動する様々な方をつなぐ懇親会を開き発展会の会員を広げる活動をしています。また、地域みんなで作る・参加するイベントの開催や環境保全/清掃活動を行い、地域の絆を深める活動に力を注いでします。

私たちいりなか商店街発展会にとっての「発展」とは この街に関係する人の絆が結ばれ・深まり・広がること。

「ここで暮らしたい」そんな思いを創っています。

 

   

いりなか商店街発展会、今後の展望

自分の欲に沿ってしまうとうまくいかないし、そういうのは好きではないので、世の中の流れに任せながら、人のためになることをするのが自分の喜びであり、モチベーションとなっています。

これからも商店街は地域のみんなが喜ぶことをやっていきたいと思っています。

外に向けたPR活動や直接的な利益より、長い目で見てここに住んでいる人たちにもっとこの土地を好きなってもらいたい。また、子供たちが大きくなった時の「帰りたい場所」をつくれるとよいなと思います。

現在はコロナ禍で集まることが難しいので、子供たちの地域教育のためにWEB媒体を使って職業体験や地域探検を、子供の目線で形にして行けないかなぁと現在企画中です。

歯科医師としても、いりなか商店街発展会の会長としても、地域の結びつきや絆を下支えできる役割としてこれからも活動していきたいです。

  

坂井歯科医院
名古屋市昭和区隼人町6-6
052-832-5637
https://sdc-irinaka.com/

いりなか商店街発展会
http://irinaka.jp/index.html