コーヒーとのかけがえのないひとときをお届けしたい

ゴルピーコーヒー代表 河合佑哉さん

地下鉄鶴舞線・川名駅の3番出口徒歩約3分。山王通りから南に1本入った住宅地の中に、突如素敵な看板とともに白を基調にしたおしゃれな建物が見えてきます。

ここはジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップ(JCRC)優勝者のいらっしゃるコーヒー通絶賛のお店。 入口右手には大きな焙煎機が見えます。そしてガラス張りの明るいお店のドアを開けるとさわやかなコーヒーの香りにつつまれます!
今回はゴルピーコーヒー代表の河合佑哉さんにお話を伺いました。

  

  

   

焙煎士とは

皆さんがコーヒー豆と呼ぶものは、コーヒーの木になる果実の種です。その種を焼くことを焙煎と言い、焙煎して茶色いコーヒー豆にする作業を行う人を焙煎士といいます。焙煎することでコーヒーに味を付けるようにローストの香りをつけることも焙煎士の仕事です。昔は焙煎士の仕事はコーヒーを焼く作業だけでしたが、近年は味の確認や品質管理も行います。

私は豆の買い付けも行っています。自分で選び買い付けたコーヒーを焙煎し、ゴルピーコーヒーで提供するため中米のニカラグアやコスタリカ~ブラジルへ行くことが多いです。

移動はトランジットまで入れて丸1日以上かかりますね。到着したら毎回約1~2週間滞在して、車で移動しながらいくつものコーヒー農園を周ります。生産者とコミュニケーションを取り、コーヒーの味や品質を評価するために焙煎された豆のカッピング(テイスティング)をひたすら行います。1度に約10種類の豆のカッピングを1日約3回、5日間ほど行い、大体1カ国で150~200種類をカッピングします。その中からどれを買うか選定して買い付けていきます。集中力と体力を要しますがコーヒーは原料の質で味が7~8割くらい決まると言われていて、この選定がゴルピーコーヒーの味の根幹を決めるのでとても大事な仕事ですね。

買い付け以外にも生産国で開催されている生豆の国際品評会に審査員として赴くこともありますが、その際にも期間中はカッピングのくり返しです。生豆の質がわかるかどうかは焙煎士にとっては今や欠かせないことですね。

   

   

     

大切にしていること

焙煎は豆の良さを引き出すことを第一に、この豆にはこの焼き方が合うというのをベースにしながら経験則で焙煎を行っています。お客様に販売する前に試作とテイスティングを何度も調整します。

生豆を国際審査する際の基準があり、うちの商品はそこから見てもトップクラスを扱っているという自負はあるものの、コーヒーは嗜好品でお客様のご嗜好も考えないといけない。なのでお客様の好みの味と、こちらの考えるいいコーヒーの2つの軸を掛け合わせて、焙煎具合や取り扱う豆の種類などを決めています。

難しさもありますが、美味しい食べ物や飲み物を扱えるというのは幸せなことなので、楽しい仕事の一つだと思っています。

「美味しいコーヒーの特徴は後味がさっぱりとしていて、余韻がきれいに消えていくもの」

これはどのコーヒーにも共通して言えると思います。

口に入れたときに花のような香りがするもの、果実味があるもの、カラメルっぽい甘さのあるもの…というのがそれぞれのコーヒーの風味の違いです。そういった印象の違いは豆によるところが大きくて、コーヒーの品種や、種を取り出す方法によっても味は大きく変化します。

コーヒーの実はサクランボのようなもので、乾燥させて種を取り出すときに、果肉を付けたまま乾燥させて取り出すのか、一度果肉を取り除いて乾燥させるのかで風味が全く異なってきます。

乾燥は平地で行っていますが、コーヒーの栽培は標高1,200~2,000mの高い山肌で行われています。中米は国土が狭く、火山の多いエリアなので、標高が高いところは必然的に山肌になってきます。同じ生産者の同じ品種のコーヒーでも、山肌の東側か西側かで採れるコーヒーの品質が変わりますね。その時の日差しの当たり方とか、山肌を駆ける風の抜け方とか、気候条件の違いを僕らはマイクロクライメイト(微小気候)と呼んでいて、このように複雑で繊細な環境の影響を受けてコーヒーの味が変化します。

同じ農園の同じ豆でも年によって出来も違うので、生産者は豆の状態をみて乾燥方法を変え、様々なアプローチで良い品質の豆を作っています。そしてあまり知られていませんがコーヒー豆は一粒ずつ手で摘みます。完熟度合いも揃えて摘むのも専門の仕事になりますよ。

買い付けの難しさは、地球環境の変動に大きく影響されますね。農作物であるので収穫できるはずのものができないこともありますし、あとは生産国の政治的状況で現地への訪問が難しい場合もあります。なので毎年必ず同じ品質の豆が確保できないのは難しさだと思います。お客様には旬のフルーツを楽しむような感覚でお召し上がり頂けるとコーヒーの選択肢が広がるのを体感頂けると思います。

    

       

          

焙煎士を目指すきっかけ

戦前、私の祖父は中区大須の松屋コーヒー本店さんに勤めていました。戦後の1945年に松屋コーヒーの暖簾分けとして独立し始めさせてもらったのがうちの会社の始まりです。なので今でも会社名は株式会社松屋コーヒー部 /ゴルピーコーヒーです。

僕が焙煎士というかコーヒー屋になろうと思った最初のきっかけは、祖父の代からの家業を初めて仕事として意識したころからだと思いますが、まだ漠然としていました。

はっきりと焙煎士になろうと決めたのは、大学卒業後、東京のコーヒー会社に勤めていたときです。

当時品質に特化したスペシャルティコーヒーというのはまだあまり世の中に出回っていなかったんですよ。その当時のコーヒーの主流は結構イメージにあるような苦いもの。コーヒーを砂糖なしのブラックで飲めるのって大人の仲間入り!みたいな、そういうものを扱う仕事だと思っていました。

そんな中、スペシャルティコーヒーに出会いました。初めてそれを飲んだ時、コーヒーというより果物のジュースを飲んでいるような感覚。「こんなコーヒーってあるんだ!」と感動しました。そこから将来やるならただ苦いだけじゃない、果実味や花の香りが感じられるものやクリアーで時にはキャラメル感だったり…こんなコーヒーを扱う仕事をしたいなと思ったのが、改めてちゃんとコーヒーに向き合ったきっかけです。

そしてこんなにおいしいコーヒーがあるなら、その世界の最前線でいられる仕事をしたい。世界中の楽しい美味しいコーヒーを自分の五感で感じて、形にしていけるのは焙煎士だな、って。仕事の業務以外にも勉強とトレーニングを繰り返す毎日になりました。

東京から名古屋に戻り、しばらくして会社の転換期が訪れました。

ちょうど世間的にもスペシャルティコーヒーが認知されつつあり、おいしいコーヒーに風味の良いものを求めている方が増えてきた時期だったと思います。自分が感じてきたものを形にしてはじめてやってみようと思いで出来たのがこのゴルピーコーヒーです。

コーヒーの品質や味の追及はもちろんのこと、楽しみ方は飲むだけでなく見た目や雰囲気も大切にしてほしいという思いがあり、パッケージも自ら案を出しデザイナーさんに依頼しています。お客様のご自宅に佇むコーヒーの姿も想像してデザイン作りも気を付けています。

お店での接遇や、サービスの仕組みは最初から今でもずっと改善し続けています。そうして徐々にお客様からもご支持いただき、やってこれた5年間です。

  

   

    

コロナ期における変化

新型コロナウィルスの影響で家にいる時間が長くなり、在宅ワークの方もありご自宅でコーヒーを楽しまれる方も多くなったと思います。ステイホーム当初、お客様がご来店されてコーヒーを淹れるセットを一式ご購入くださいました。お話を伺うとそれまではなんとなく会社で用意されるコーヒーを飲んでいたようです。でもこれを機にご自身でもコーヒーを淹れてみようとのこと。

「こんな味や世界があったなんて」

この仕事の初心に戻り、多くのことに気づかされる励ましの言葉も頂きました

他にもこれまでは百貨店でコーヒーを購入されていたお客様が、新型コロナの影響で百貨店がクローズしてしまった際ゴルピーコーヒーにお越しくださいました。家の近くでこんなにおいしいコーヒーが買えるならと、ゴルピーコーヒーのリピーターになってくださった方もいらっしゃいます。

「わ」編集部:コーヒーは好きなのですが、コーヒー専門店ってなんとなく緊張するし種類も豊富で難しそうです。コーヒー初心者におすすめの買い方や選び方はありますか?

河合さん:是非ゴルピーコーヒーにお越しください。(笑)
店の大小、新旧に関係なく、まずはお店の人と話しやすいコーヒー屋さんを選んでもらうのがいいかなと思います。そういうお店でコーヒーを数回試していただくと自分に合う合わないがわかると思います。

ゴルピーコーヒーの場合だと、すべてのラインナップをご説明してから、一つご試飲頂きます。飲むことで味のすり合わせができるので、そこからもう少しカラメル系の甘さがいいのか、果実味の強いものがいいのか…などを伺いながら選ぶ時間を楽しんで頂けるように心がけています。

初めて行ったコーヒー屋さんで緊張するのは誰でも同じだと思います。ゴルピーコーヒーのコンセプトの一つとして「こだわりの見える化」を大切にしています。ガラス張りで中を見やすくして、初めてでも緊張せずに、心地よく買い物を楽しんでいただくことを心がけています。うちは女性のお客様や小さなお子さん連れのお客様も多いんですよ。

  

  

   

地域との関り

僕は小さいころからずっと川名に住んでいます。そして地域に育てられたので、ずっと川名でお店をさせてもらっています。
川名は環境もいいですし、いいお客様、優しいお客様が多いと思います。そして慣れ親しんだ地だからこそ自分のペースで仕事をしやすいと思っています。あまり大きな声では言いませんが地元の川名が好きです。(笑)
今後何か少しでもお役に立てることがあればどんどん関わっていきたいなと思っています。あとかわな病院さんには僕の家族がお世話になりました。半径2㎞以内で生活のすべてが整う川名ってすごくいいエリアだと思います。

   

   

   

今後の展望

コーヒー屋さんは2つ成長のフェーズがあると思っています。一つはカフェを多店舗展開していく、もう一つは豆の販売をメインとしてやっていく。

僕はずっとおいしいコーヒーに触れ、新しいプロセスや品種の進化が日々アップデートされるコーヒーを扱うことに関わり続けたいという思いが強いので豆の販売をメインとして考えています。
この方法の良いところは多店舗展開せずとも地球の裏側までお客様にコーヒーが届けられるところだと思います。すごく夢があるなと思ってやっています。加えてお客様の 自宅で淹れるコーヒーがより楽しんで頂けるようにお伝えすることも大切にしています。

有難いことに店舗展開のお話もいただきますがゴルピーコーヒーはずっと川名発です。お客様への接客やコミュニケーションをとても大切にしているので川名から全国に発信し続けます。

ご来店のお客様には個別にコーヒーカルテを作っているので、次のお買い物にも活かせますしお客様のご嗜好からその時にあったコーヒーのアドバイスもできます。現在6,000名以上のお客様のカルテをお預かりし、安心して気軽に次回も使えるような「行きつけのコーヒー豆専門店」と呼んで頂けるような店作りを目指しています。

近年、各生産国では様々なコーヒーの作り方を試していて、今後コーヒーの味はもっと進化するはずです。私たちに身近になったスマートフォンが普及し急速に世の中が変化していくようなスピード感で、この10年コーヒー業界も様々な変化がありました。

その楽しい変化をお客様にお伝えできるよう今後もこの場所でしっかりやっていきたいと思います。

   

ゴルピ―コーヒー( 株式会社 松屋コーヒー部 )
愛知県名古屋市昭和区駒方町2-4-2
052-832-0100
https://golpiecoffee.jp/